現代人は歩くという行為そのものが減っています。技術の進歩により車社会へと変化し、インターネットの普及で家から出なくても買い物をすることができるようになったからです。一昔前なら、外出して店舗に行き、時間をかけて商品を選び買っていたものまで外出せず手軽に手に入れることができるのです。つまり、現代人は知らず知らずの内に運動不足となる環境に身を置いているのです。
デスクワークが多いビジネスマンやタクシー・トラックなどのドライバーの方などは、ほとんど座りっぱなしの状態ですので、慢性的な運動不足と言えます。 運動不足になると、腰まわりの筋肉が弱くなり腰痛になりやすくなります。かつては日常生活の中で自然と身体を動かしていたのが、意識しないで日常生活を過ごしてしまうと、運動量が格段に少なくなってしまうのです。また、洗濯、掃除さえも電化製品がやってくれます。家事が楽になったのは良いことですが、健康面から考えると必ずしも良いとは言えません。ある調査によれば、腰痛患者の80%以上は、運動不足から身体の柔軟性や筋力の低下を招き腰痛を起こしているそうです。腹筋と背筋のバランスがよくなかったり、無理な姿勢をとったりすると椎間板ヘルニアなど重症の腰痛を招くこともあります。ですから、運動不足の人ほど、日常生活のなかで意識して身体を動かすことが必要になるのです。
肥満でも腰痛が起こることはあります。太りすぎると、自然な背骨の形状を妨げてしまうからです。背骨は、身体のバランスを支え、2本の足が地面に着くときのショックを吸収するために、緩やかなS字カーブを描いています。しかしながら、肥満でお腹が出てきてしまうと、自分ではまっすぐ立っているつもりでも、身体の重心が前に移動して、背骨に余計な負担がかかってしまいます。そのため腰に体重の全てがかかり、結果として腰の筋肉に疲労がたまり、腰痛となるのです。腰痛は、筋肉が弱くなることも原因の1つです。肥満の人は一般の人に比べて筋肉があまりないので、腰への負担も大きく、立ったり座ったりといった動作は腰へ体重の2.5倍の負担をかけているのです。
ストレスが原因で腰痛を発症することもあります。原因不明の腰痛、治りにくい腰痛などの背景には心の問題が関わっていると最近になってわかってきました。検査をしても骨の異常が見当たらなかったり、見つかったとしても、訴えている症状と一致しないことがあります。そして、このような原因不明のまま何か月以上も続く慢性的な腰痛を訴えるケースも多々あります。実は、慢性腰痛を訴える患者の約8割にうつ状態がみられるとも言われており、心の問題が腰痛に大きく影響していることがわかってきました。人は、絶望、怒り、不安などを感じているときに通常よりも痛みを感じやすい状態になっています。
また、寝不足や運動不足といった肉体的な疲れが出ているときにも、痛みを感じやすくなっています。腰痛の原因となるストレスは人によってさまざまあり、受け止め方もさまざまです。しかし、心因性の腰痛になりやすい人は、ストレスを上手に受け止められなかったり、発散できないことが共通して見受けられますので、ストレスをうまく発散する方法を考えたり、生活環境を変えてみることが有効といえます。