「世界的な疾病の課題2010」という研究データをもとに、シドニー大学の研究チームが腰痛の引き起こす障害について調査しています。対象地域は187ヵ国21地域で、腰痛の原因はさまざまですが、年代によって傾向がある事がわかりましたので以下にまとめています。
40~50歳代では、椎間板ヘルニア。
頚椎(背骨)は、積み木のように重なる椎骨26個と、それらの間でクッションの役割を果たしている椎間板で構成されています。椎間板が傷んでいると、圧力が加わることで脊髄や神経根を圧迫することがあり、このような状態を頚椎椎間板ヘルニアと言います。加齢、長時間にわたり首に負担がかかる姿勢をとる、また運動などで首に大きな力が加わる等も椎間板が傷む原因になります。
60歳以上では、脊柱管狭窄症。
脊柱(背骨)の中の神経が通る空間(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されて腰痛となって現れる症状です。腰椎椎間板ヘルニアはおじぎをすると痛くなり、体を反らせると楽になりますが、脊柱管狭窄症は逆に、体を反らせると痛くなり、おじぎをすると楽になります。
腰痛は原因を特定できないケースが多く、原因のはっきりしている腰痛は全体の約15%とほんの少しです。どの年代でも圧倒的に多いのが、明確な原因が見つからない腰痛なのです。エックス線検査などの画像検査で異常が見つかりにくい筋肉や関節、椎間板などに原因があるとされ、特に筋肉に関係する腰痛が多いとされています。職場で発生する腰痛には、長時間の同じ姿勢、荷物等の持ち上げが多い、力仕事が多いなどが影響しています。
シドニー大学の研究チームは、腰痛が引き起こす障害を障害調整生命年(DALY)という数値で算出しました。この数値は、病気やケガなどで損失した年数を示すものです。世界の働く人達が腰痛になって生じたDALY値は約2,200万で、3分の1は労働作業が原因で引き起こされていると言われています。その腰痛の発生率が高い年齢は35~65歳で、働き盛りの世代です。さらに腰痛に悩まされている働き盛り世代は先進国の人と考えがちですが、実際は全世界に見られる傾向で、人口密度の高いアジア、北米、中東、オセアニア、アフリカでも腰痛は増加傾向にあります。研究者は、「腰痛のリスクがもっとも高いのは、働き盛りの農業分野と腰に負担のかかる介護・看護分野」と述べています。